ワークアカデミー35周年記念セミナー 第3部 講演
株式会社ワークアカデミー 代表取締役会長 大石 博雄
いままでの歴史をふりかえれば、未来が見える。
『ワークアカデミー35周年記念セミナー』の最後を締めくくるのは代表取締役会長、大石博雄。
創業当初より今までの過ぎ来し方から講演はスタート。
そして、教育ビジネスに対する熱い想い、そして街をフルに活用した新しい学びの体系まで、多岐に渡る提言を行った。
株式会社ワークアカデミー 代表取締役会長
大石 博雄 講演
大石 博雄
株式会社ワークアカデミー代表取締役会長
大学卒業後、スペインへ留学。マドリードを拠点に世界74ヶ国を旅する。帰国後、情報教育ビジネスを起業。現在、株式会社ワークアカデミー代表取締役会長をはじめ、一般社団法人 未来教育推進機構代表理事を務める。教育機関・企業・行政でのコンサルティングのほか、経営マネジメント・営業系の研修では高い評価を得ている。また、中堅企業の再生に加え、大学でも教壇に立つなど、幅広い活動を続けている。21世紀の新しい日本に役立つ志ある若者を育てる教育「学び」プロジェクトを力強く推進している。
35年の歩みで、1名から300名規模へと仲間が増えていった
―在籍スタッフも数多く出演した35周年記念プロモーションビデオからスタートした代表取締役会長、大石博雄のスピーチ。
創業当初の裏話やこぼれ話に、あちこちで笑いが上がり、満席の会場は徐々に話に引き込まれてゆく。
私が教育ビジネスで創業したのが1982年。プロモーションビデオでは8名でスタートしたとありましたが、実質的には私一人。ほとんどが富士通さんのスタッフでした。
当時、オアシスというープロのヒット商品があり、この新しいOAツールのプレ教育を富士通が、アフター教育を私が担うというカタチで教育ビジネスに足を踏み入れたんですね。
富士通の営業会議や販売会議にも潜り込ましてもらってビジネスのノウハウを実地に学びました。
こんなこと、今では考えられないでしょう(笑)。富士通の部長がアフター教育の担当として納入先に私を紹介する時に「先生、先生」と下にも置かない扱いに。その言葉に納入先は私がすごい専門家だと勘違いする訳です(笑)。
これは巧みな営業戦略の一環。実際の力関係でいえば、輝くような大企業と小さな下請けに過ぎないんですけどね。
このようにラッキーなスタートを切ることができ、今では我が社もグループ全体でスタッフ300名弱、登録講師・インストラクター3000名を擁する企業へと成長することができました。
メインテーマは「教育から学びへ。歴史の転換点にあたり」
―過去を丁寧に省察することで、これからなすべきことが見えてくる。
学びの体系のこれからを考える大きなテーマが据えられた。
私が好きな言葉のひとつが「ふりかえれば未来」。会社を興してから35年が経ち、私もふりかえるべき地点に立っているかと思います。今日はこの言葉を軸に、「教育から学びへ。歴史の転換点にあたり」という大きなテーマで話をしていきたいと思っています。
少し回り道になりますが、大学時代の話から始めますね。卒業を間近にしながら、私は就活をしませんでした。友人がやっているので真似事程度になぞりましたけどね(笑)。少しやってみて、どうも違うなと….。でも、何をすれば社会に役立てるんだろうと、底の知れない深い悩みに落ちてしまったんですね。悩みぬいて出した結論が30歳ぐらいまでの人生は学びだ。それまでは経験を積み、訓練する修業時代だというものでした。そこでスペインで美術史を学ぶことにしました。もちろん、スポンサーである親の説得にも物語があるのですが、それはまたの機会に(笑)。
世界各地で出会った子どもたちの夢が原体験に
―起業する前の留学時代に訪れた貧しい国々での子どもたちとの出会い。身近な人を幸せにしたいという彼らの真摯な願いに触れたことで基本的な哲学が形作られていく。
スペインの気候風土は私にとってしっくり合うものでした。女性もベッピンさんですしね(笑)。すごく肌に合うスペインを拠点に私は世界各国を旅して回ることになります。ヨーロッパというのは美しい街並をもった奇麗な国が多い。そして、食べ物のおいしい街もたくさん。
でも、当時の私がもっとも興味を持ったのは発展途上国。貧しい国へ行くとなぜか心が躍るんです。そこでの人との触れ合いが楽しい。気に入った街を見つけるとしばらく滞在します。とはいっても、実際は下痢との戦い(笑)。食べて下痢になるか、食べずに死ぬかなんですから。いいこともあって、土地の人と同じものを食べていると仲間だと認めてくれるんです。現地の暮らしのなかに入り込んでいくと、屈託なく笑う子どもたちと仲良くなることに。一緒に遊んでいると彼らは夢を語るんですね。「将来は医者になるんだ」とか、「先生になるのよ」、「看護師になりたい」とかね。彼らの貧しさを見ると夢の実現は不可能だとしか思えません。でも、いつしか彼らが途方もない夢を語る理由がわかってきました。
夢の背景にはお父さんやお母さんを幸せにしたいという願いがあるんです。貧しさを知っているからこそ、彼らの思いは本気なんですね。この記憶が原体験として今も私のなかに生きています。日本はバブル崩壊後の二十数年停滞に苦しんでいます。その間に私が訪ねた国々は飛躍的に発展していきました。そして、私が出会った子どもたちがそのリーダーとなってやっているのではないでしょうか。夢を持っていれば人は変われる。でも夢だけではダメで、勇気を持って一歩踏み出す力が必要なんだと思います。これが私がワークアカデミーを作る前に持っていた基本的な考え方、大げさに言えば哲学なんですね。この想いがあるから、教育ビジネスを始めるにあたって当時の最先端技術、職業訓練につながるワープロスクールを選んだと言えるでしょう。
学ぶ楽しさを知れば、いつまでも充実して生きていける
―会社運営で一番大事なのは利益ではなく、基本的な考え方、哲学をメンバーが共有すること。
創業から取り組んできた役に立つ情報教育も大切です。でも、本質的にもっと学ぶべきものがあるのではないかということに気づいた出来事が1995年の阪神大震災。生きるか死ぬかという体験をしたことで、人間にとって一番大切なのは「学ぶ楽しさ」や「学ぶ喜び」を知ることではないかなということに気づかされました。
それから、私が取り組むテーマはすべての教育へと広がっていったんですね。「学ぶ楽しさ」、「学ぶ喜び」を知っていれば、いつまでも充実して生きていけるでしょう。
歳をとっても老け込むことなくね(笑)。教育を担う企業として、この基本的な考え方を社員全員で共有することが大切だと思っています。
縦に伸びるハルカス大学から都市全体に広がるUMEDAIへ
―これからは新しい学びの体系を作っていこう。
高層ビルのハルカス大学から都市空間を活用したUMEDAIへ展開。
もう一つの転機となったのがあべのハルカス開業。あの日本一高い商業ビルに近鉄さんやいくつかの大学とコラボでハルカス大学を作りました。ご存知のようにハルカスからの眺望は素晴らしい。
そこから梅田の方を見た時に閃いたんですね。この広大な空間を学びのために活用すれば、すべてのものが出会い、学び、変化していく社会が実現するのではないかと。
梅田に集う人がみんな一緒になって学びをテーマにして活動していけば、大学や高等学校、企業の人材育成を補完する新しい学びの体系になるだろうと。それがUMEDAIです。
2018年4月UMEDAI始動で新たな学びのメソッドを確立
―新たな学びの体系をご提案し、これからの日本をともに支えていく人材作りを一緒にやっていきたい。
UMEDAIでは若者、女性、海外人材、若い社会人が交流できる場を提供していこうと考えています。人生で一番刺激を受けて成長するのは18~28歳の期間。この10年間を一気通貫の学びの体系で一緒になって学び、遊び、ともに暮らしていくことで、「学ぶ楽しさ」と「学ぶ喜び」を知って欲しい。私がUMEDAIで狙っているのはそこなんですね。
さらに、私たちのような社会経験者、いわばその道のプロがこの場に加わることで、ダイナミックな学びの体系を作っていきたいと考えています。
来年の4月に向け、UMEDAIを担う社団法人を設立しました。未来教育推進機構です。これは我が社だけで取り組むべき小さな課題ではありません。ぜひ、皆さんにもこのUMEDAIプロジェクトに参加して頂きたい。一緒に新たな学びの体系を作っていきましょう。